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生後 2 か月未満の乳児における重症百日咳の発症に関する注意喚起と治療薬選択について (1 ページ)

公開元URL https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250623_jyushouhyakunitizeki.pdf
出典情報 日本小児科学会 学会の考え方・提言・見解等(6/22)《日本小児科学会》
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2025 年 6 月 22 日
生後 2 か月未満の乳児における重症百日咳の発症に関する注意喚起と治療薬選択について
日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
日本小児科学会は、2025 年 3 月 29 日付で、我が国で百日咳患者の増加とマクロライド
耐性百日咳菌の分離頻度が増加している現状について注意喚起を行いました 1)。この度、5
種混合ワクチン接種前の生後 2 か月未満の新生児および乳児において重症百日咳症例が相
次いでおり、また、百日咳含有ワクチン接種前の症例で死亡例も確認されているため 2)、
改めて注意喚起を行います。
生後 2 か月未満の新生児および乳児にとって、百日咳菌感染は急速な呼吸不全、無呼吸、
脳症、肺高血圧症などを伴い、致死的な経過をとることがあります。通常、百日咳の治療に
はマクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン等)
が用いられます 1,3)。しかし、近年では、マクロライド耐性百日咳菌の出現が世界中で問題
となっています 3)。国内においても耐性菌の頻度が上昇しています 1-3)。すべての症例が耐
性菌による発症とは限らないものの、乳児の重症例ではマクロライド単独治療が奏功しな
い可能性も念頭に置いた対応が求められます。
そのため、重症百日咳が疑われる症例においては、マクロライドに加えて ST 合剤(スル
ファメトキサゾール・トリメトプリム)の併用投与を検討する必要があります 4,5)。ただし、
ST 合剤は黄疸を有する新生児において、アルブミンとビリルビン結合の Displace 作用によ
ってビリルビン脳症の発症リスクがあるため使用に注意する必要があります 1,2)。また、検
査診断された百日咳患者の家族に対して ST 合剤の予防投与を検討する場合には、十分な説
明と同意を得た上で考慮することが望まれます。ST 合剤の供給不足を避ける意味で、家族
内にハイリスクの乳児がいない場合は必ずしも ST 合剤の投与が必要ではないことをご理
解ください。なお、電子添文(電子化された添付文書)上、ST 合剤の成分又はサルファ剤
に対し過敏症の既往歴のある患者、妊婦又は妊娠している可能性のある女性、低出生体重児、
新生児、G-6-PD 欠乏患者には禁忌になっていますのでご注意ください。
また、in vitro で最小発育阻止濃度が良好な抗菌薬を含有する製剤(ピペラシリン、ピペ
ラシリン・タゾバクタム、セフォペラゾン・スルバクタム)での 14 日間治療が有効とする
報告もありますが 3,6)、臨床的なデータは現時点では限られています(成書には代替薬とし
て ST 合剤の記載はありますが 7,8)、ピペラシリン、ピペラシリン・タゾバクタム、セフォペ
ラゾン・スルバクタム等の記載はありません)

ワクチン未接種の生後 6 か月以内の重症例では、免疫グロブリン製剤の投与も選択肢と
して考えられますが、投与を検討する場合は十分な説明と同意を得てからご検討くださ
い。