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メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に (2 ページ)

公開元URL https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2025/cduaom000001acdu-att/20250611hara-re.pdf
出典情報 横浜市立大学 プレスリリース(6/13)《横浜市立大学》
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訂正版
Press Release
研究背景
近年、労働者のメンタルヘルスに起因する生産性の低下が、経済・社会に及ぼす影響とし
て注目されています。中でも、出勤はしているものの心身の不調により本来のパフォーマン
スが発揮できないプレゼンティーズム*1は、欠勤(アブセンティーズム*2)以上に企業・
組織に大きな損失をもたらすことが指摘されています。しかし、こうした「隠れた損失
(Hidden Cost)」は、医療費などと異なり統計的に可視化されにくく、政策決定や職場対策
において十分に考慮されていません。
これまでの先行研究では、特定の企業や業種に限定したプレゼンティーズム損失の定量
的評価や、うつ病など特定の診断名に基づいた分析が多く、全国規模かつ多様なメンタルヘ
ルス症状を含めた網羅的な経済損失の推計は限られていました。また、精神的な不調を自覚
しながらも医療機関を受診していない層の影響は、従来の医療ベースの研究では捉えきれ
ていませんでした。
本研究では、メンタルヘルスに関連する主観的な症状(例:
「気分が沈む」
「眠れない」な
ど)を有する労働者のプレゼンティーズムおよびアブセンティーズムを対象とし、それらが
もたらす社会経済的損失を全国レベルで金額換算し、初めて包括的に明らかにすることを
目的としました。
研究内容
本研究では、全国の労働者 27,507 名を対象に、性別・年齢・地域を層化抽出したインタ
ーネット調査を 2022 年に実施しました。調査では、メンタルヘルスに関連する主観的な症
状(例:
「気分が沈む」
「眠れない」など)や、これらの症状による仕事のパフォーマンスへ
の影響(プレゼンティーズム)、および過去 1 年間の病気による欠勤日数(アブセンティー
ズム)を自己記入式で収集しました。
プレゼンティーズムの評価には、症状がある期間における仕事の「量」と「質」の低下を
11 段階で評価する Quantity and Quality method*3を用い、症状の発現日数と掛け合わせる
ことで年間の損失日数を算出しました。アブセンティーズムは、欠勤日数のカテゴリを中間
値に変換し、同様に年間損失日数を推定しました。
得られたプレゼンティーズムおよびアブセンティーズムの年間損失日数に対し、性別・年
齢別の労働参加率と平均日収(厚生労働省統計)を掛け合わせることで、経済的損失を金額
換算しました。推計にはモンテカルロ法による確率感度分析*4を適用し、95%信頼区間を
算出しています。
その結果、プレゼンティーズムによる損失額は約 4.67 7.3 兆円、アブセンティーズムによ
る損失は約 0.19 0.3 兆円であり、合計は約 4.8 7.6 兆円に達しました。これは日本の国内総
生産(GDP)の約 1.1%に相当します。また、65 歳未満の精神疾患にかかる医療費(約 0.7
1.1 兆円)と比較しても、損失額は 7 倍以上にのぼることが明らかとなりました。さらに、
20〜30 代の女性において有症状の報告割合が特に高く、対策の必要性が示唆されました。

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