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資料10 マクロ経済運営について(有識者議員提出資料) (1 ページ)

公開元URL https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/0526agenda.html
出典情報 経済財政諮問会議(第6回 5/26)《内閣府》
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資料 10

マクロ経済運営について
2025年5月26日
十倉 雅和
中空 麻奈
新浪 剛史
柳川 範之

世界経済の先行きについての不透明感が高まっている。最大の下振れリスクである米国の関税
措置による実体経済・金融資本市場への影響に加えて、自国第一主義や権威主義的国家の台頭、
ロシアによるウクライナ侵略や東アジアを含めたグローバルな地政学リスクの高まりなど、我が国が
長年にわたり恩恵を受けてきた自由貿易体制をはじめとしたこれまでの国際秩序が変化しつつあり、
不確実性が高まっている。
こうした環境の中で、足下の物価高、恒常的な人手不足等の課題に直面する日本経済は、適切
なマクロ経済運営の下、不確実性の高まりにひるむことなく、賃上げや投資拡大の流れを止めない
ように取り組み、成長と分配の好循環を実現するとともに、国際環境の変化に対応できる経済構造
に転換していく必要がある。こうした問題意識の下、以下、提言する。
(関税措置を踏まえたマクロ経済運営)
 国際機関や民間機関は、米国の関税措置が我が国の成長率を押し下げる 1との見通しを示し
ている。関税措置が、貿易への直接的な影響だけでなく、家計や企業のマインド悪化等を通じ
て消費や投資を下振れさせるリスクを注視しながら、経済財政諮問会議において、マクロ経済
の観点から課題を総合的に分析しつつ、今後の政策運営について継続的に議論すべき。
 不確実性が高まることで、企業が設備投資を手控える懸念 2があり、緩和的な金融環境の下で、
政府として省力化投資などの投資拡大を計画的に促進すべき。更に、2030 年度に 135 兆円、
2040 年度に 200 兆円の民間設備投資を目指して、官民で投資拡大に取り組むべき。
 米国関税措置に加え、食料品を中心とした物価上昇の継続の中で消費マインドが悪化してい
る。財源の裏付けのない減税政策よりも、経済全体のパイを拡大する中で賃上げモメンタムを
定着させることが重要であり、生産性向上・成長力強化を図るべき。物価高対策については、
コメを安定した価格で供給するための対策など、物価・経済の状況に応じて必要な対策に焦
点を当てて実施すべき。
 米国で株式・債券・通貨のトリプル安となる局面が生じた。足下で、我が国の超長期国債の金
利が上昇しているが、市場において長期的な財政の持続可能性への疑念が高まり、不測の金
利上昇を招くことのないよう、2%の物価目標を安定的に実現しつつ、経済再生と財政健全化
を両立させることが重要。
(経済構造の在り方の検討)
 米国の関税措置などの保護主義的な動きや地政学上又は金融資本市場における不確実性
の高まりなどの国際秩序の変化は、我が国の経済財政運営にとっての大きなパラダイム・シフ
トである。このパラダイム・シフトに際して、ピンチをチャンスに変えるためにも、世界の中で我が
国のプレゼンスを高めるようにすることが重要。
 外部環境変化に強い経済構造への転換など、変化しつつある国際秩序の下での我が国の経
済構造の在り方、取るべき戦略・対応策について、経済財政諮問会議で議論を深めるべき 3。
1

IMF(2025 年 4 月)は 2025 年の日本経済の成長率見通しを 0.5%pt 引き下げ。他方で、米国の日本に対する関税率が、米国の諸
外国に対する関税率より低ければ、諸外国から米国への輸出が減り、日本から米国への輸出が増える効果(貿易転換効果)が見込
まれる、という分析もある。
2
設備投資は、リーマンショック時には▲19%、コロナ禍には▲10%減少(四半期ベースでのピークからボトムにかけての変化率。季節
調整済実質系列。)
3
例えば、投資・対内直接投資の拡大、サプライチェーンの多角化、M&A促進、円滑な労働移動、サービス業の生産性向上などの
論点が考えられる。

1