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資料4 冨山構成員提出資料 (1 ページ)

公開元URL https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai13/gijisidai.html
出典情報 全世代型社会保障構築会議(第13回)(2/24)《内閣官房》
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資料4
第 13 回全世代型社会保障構築会議 意見書
2023 年 2 月 24 日
株式会社経営共創基盤
IGPI グループ会長 冨山和彦

1.根底的な問題は働き方、生き方の変容性と多様性に否定的な現在の社会システム
少子化問題の根底にあるのは、日本型メンバーシップ正社員雇用制度を軸とする社会シ
ステム、社会的セーフティネットの仕組みの耐用期限の問題であり、少子化対策を働き方改
革と関連付けている政府方針の方向性は的を射ていると考える。
その一方で、この問題の根は深い。明治以来の工業的近代化の過程、さらには戦後復興か
ら高度成長期における加工貿易立国モデルにおいて、男性を終身年功制のもとにカイシャ
に従属させ(その代わりに定年までの金銭的な世帯的生活保障を行い)、女性をイエに従属
させて社会的な世帯機能である子育てと家事を担わせ、これが大量生産工業化モデル時代
に見事に機能したのが、いわゆる日本型メンバーシップ正社員雇用制度を軸とした我が国
の社会システムだった。しかし、このシステムは 1990 年代以降、DX とグローバル化によ
る破壊的産業変容の時代に入り、社会的にも女性の社会進出や働き方、生き方の多様化によ
る変容が進む中で、明らかに機能の耐用期限を迎えている。従来の仕組みは産業も社会もゆ
っくりと小さい幅で変容する空間においては、同質的、平均的集団による改善改良、集団的
オペレーションに好都合なのでうまく機能するが、かかる空間はどんどん減少し、その包摂
性も有効性も低下したことが、30 年間にわたる賃金上昇の停滞、非正規とその周辺での貧
困問題の深刻化、さらには少子化の加速につながり、今や国家社会全体の持続性に赤信号が
点滅し始めているのである。
2.メンバーシップ正社員雇用モデルが陥った深い経路依存性の罠
この脈絡で言えば、正規雇用の女性が子育てから職場復帰する際に生じるL字現象の問
題も同根である。終身年功を軸とするメンバーシップ型正社員雇用が基本(あるべき「正規」
な働き方)である限り、どんな施策を講じてもパッチワークに過ぎず、少子化対策として根
本的かつ持続的な効果は得られない。メンバーシップの名の通り、この仕組みの「正規メン
バー」は、新卒入社し終身年功で当該企業にフルタイム、フルライフで働く人(だから多く
の場合は男性になってしまう)であり、そう言う働き方、生き方をエンカレッジする雇用慣
行、労働慣行になるのは合理的、必然的であり、そこから 1 年であっても離脱することは極
めて不利にならざるをえない。ましてや複数の子供を産み育てることにコミットすること
は、数年にわたり正規メンバーとしては休会となり、男女を問わずサラリーマンとして大き
なハンディキャップを負うのは当然である。太宗の日本企業の停滞ぶりから分かるように
全体としては極めて非効率、非生産的な結果になるのだが、そこから脱却できない強烈な経