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資料3-11―① 押谷先生・鈴木先生・西浦先生・脇田先生提出資料 (12 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00395.html
出典情報 新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード (第110回 12/14)《厚生労働省》
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のイングランドの献血者での N 抗体陽性率は 80%を超えているが 45、まだイングランドの
流行は継続しており、2022 年 10 月にも一定数の死亡を伴う流行が起きている。またシン
ガポールではより免疫逃避能がある XBB 株の流行が起きており、この流行では感染者に占
める再感染の割合が 17-18%であったことが示されている 46。現在、世界的には XBB と同
様に免疫逃避の程度が顕著な BQ,1 および BQ.1.1.の割合が増えてきているが、今後も免疫
逃避するような株が出現してくることは十分に予想される。これらのことを考えると、人
口のほとんどが 1 回の罹患を経験しても Rt が継続して 1 を下回り、流行の起きない状況が
長く続くことは考えにくい。おそらく多くの人が抗原性の違う株に複数回罹患するという
状況になって初めて、季節性インフルエンザのように 1 年のうち限られた時期にのみ流行
を起こすようになると考えられる。2022 年 11 月に実施された国内の献血者での抗体調査
では N 抗体陽性率は全体として 26.5%であったことが示されている 47。日本では諸外国に
比べてまだ自然感染の罹患率が低いことから、日本では季節性インフルエンザと同等のも
のと判断できるような感染症になるためにはより長い時間を要する可能性もある。
3 番目の条件である死亡者数が季節性インフルエンザの死亡者数を大きく超えないレベ
ルに目標値をどこに設定するかにもよるが、達成にはかなりの時間を要すると考えられる。
これまでは日本の人口あたりの死亡者数は他の先進国と比べても低かったが、日本は高齢
化率が世界で最も高く、欧米などと同様に対策を緩和していくと相当の死亡者が発生する
リスクがある。COVID-19 の直接の死亡の増加には高齢者施設の流行が大きく影響してい
ることから、高齢者施設での対策はさらに強化していく必要がある。それと同時に、循環
器系の合併症が死亡にも大きく関与していることを示唆するデータが蓄積されてきている
ことから、これまでの肺炎を中心とした呼吸器系の疾患としての治療だけではなく、循環
器系の疾患としての治療体制を充実させていく必要があると考えられる。また国内でも承
認されている経口薬が死亡を有意に減少させたというデータも示されている

48–50

。特に高

齢者や基礎疾患のある感染者に対し経口薬を含めた治療をさらに充実させていくことも死
亡者の絶対数を減らすためには必要だと考えられる。
医療ひっ迫の回避についても難しい課題であると考えられる。COVID-19 の流行以前か
ら日本の医療はぎりぎりの状態で維持されてきており、そこに報告数だけでも 1 ヶ月に
600 万人を超える確定感染者と 7000 人を超える死者(いずれも 2022 年 8 月のデータ)を
生むような感染症が新たに加われば医療ひっ迫が起きることは当然であると考えられる。
COVID-19 に対応できる医療機関を拡充していくことは今後も必要であると考えられる
が、以前から指摘されていたような COVID-19 に対応する医療機関を増やせば解決すると
いう問題ではないことは明らかであると考えられる。経口薬には入院などのリスクを下げ
られるとするデータもあり、こういった治療薬を特に重症化リスクのある感染者により積
極的に使うことで医療負荷がどの程度軽減できるかということも検討する必要がある。
COVID-19 の流行は今後も長期にわたって続くことを考えると日本の医療体制のあり方そ
のものを根本的に考え直すことも必要だと考えられる。
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